まあるい生活

コンポストと暮らす

読書日記:ギフトエコノミー 買わない暮らしのつくり方(リーズル・クラーク/レベッカ・ロックフェラー)

2020年にアメリカで刊行され、2021年に服部雄一郎さんによって翻訳された割と新しい本です。(2022/4/10読了)ピプレット文庫*1からお借りしました。

 

服部雄一郎さんと言えば、昨年の夏に読んだ『ゼロ・ウエイスト・ホーム』や『プラスチック・フリー生活』の翻訳者であり、今年の1冊目『サスティナブルに暮らしたい』の著者(奥様と共著)でもあります。

「ギフト」というワードから想像して、なんとなくペイフォワード(恩送り)的な美談なのかと思いこんでいました。しかし、著者の二人が”買わない暮らし”を始めたのは、子供たちと訪れた海岸で見た”プラスチックごみだらけの砂浜”がきっかけとのこと。

つまり、脱プラからスタートし、シェアする暮らし、与え与えられる関係性を育む暮らしへと発展していったものを、ギフトエコノミー、と呼んでいるようです。

読書日記を書きそびれていますが、昨年読んだ『ぼくはお金を使わずに生きることにした』に近い感じがしました。

経済社会に対するチャレンジとサバイバル・ゲーム的なスリリングな描写にワクワクさせられ、大いに刺激を受けた本です。マーク・ボイル氏は独身の若い男性ということもあり、彼の行動をそのまま真似するのはなかなか難しいと思いましたが(スーパーのごみ箱に飛び込んで食品ロスを救うなど)、氏が現実化していく分かち合いの世界には感銘を受けました。実際に、ステキと思って買ったけれどサイズの合わない器をひとに譲ったり、私が苦手な作業を得意な人にお願いしてやってもらったり、という行動も起こしてみました。

『ギフトエコノミー 買わない暮らしのつくり方』の方は、子どものいる女性ふたりがまとめたものです。ビーチに散乱するプラスチックごみを見つけた日から、プラスチックをこれ以上増やさないためにどうすれば良いのかと試行錯誤を続けた結果、SNSを使ってモノ譲り合う方法にたどり着きました。そして、その譲り合いが生み出す精神的な価値、豊かさに着目し、重点を置いているのが本書です。

 

『ゼロ・ウエイスト・ホーム』もそうでしたが、読者が取り組み易いように、具体的な方法、手順がたくさん紹介されていて細やかさが感じられました。

”買わない暮らし”を自分のものにするための7つのステップはこちらです・

1)ゆずる

2)受け取る

3)リユース&リフューズ

4)考える

5)つくる&なおす

6)わかちあう、貸す、借りる

7)感謝する

最後に、ここからがスタート---「買わない人生」、とあります。

この各項目に具体的なやり方が書いてあり、かなり実用的な本とも言えるでしょう。

「・・できないので助けてください」

苦手です、できないです、困っています、助けてください・・という発言は、ネガティブなものととらえられやすく、なかなか言い出しにくいものです。しかしこれらの要求が、”与える側に自己価値感や自己肯定感を与えている”。感謝の言葉を受け取った人の心に残る幸福感の大きさ、その価値をはっきり認めているところがこの本の特徴であり、脱プラにとどまらない「ギフト」エコノミーたる所以でしょう。

日本ではどんな活動があるのか調べてみたくなりました。地域通貨を挟むことでギフトエコノミー的な関係性を育んているところはありそうです。※本物のお金を使って譲り合いをするのは、シェアリングエコノミーと呼ばれます。

運営がスムーズに行われるためには、ある程度まとまった人数のコミュニティと、運営ボランティアの力が必要そうです。(ある程度の人数がいないと、譲りたいものと欲しい人のマッチングが十分行われない。ex) 参加者が独身ばかりのグループでは子供服をもらってくれる人がないなど)とはいえ、自宅前に置く「ご自由にお持ちください」Boxはいつでも始められますし、西荻窪ではわりあいよく目にする風景になってきています。

そういえば、私も何冊かピプレット文庫に寄贈していますし、また度々本を借りて読んでいます。シェアするだけでなく、感謝の言葉を述べることでシェアの価値が高まるなら、やはり、借りた本について読書日記を書き残しておくことも、シェアの価値を最大化させる行為と言えると思います。著者と本の貸主に感謝を込めて。

 

*1 ピプレット文庫は、西荻窪善福寺公園近くにかるカフェ・カワセミピプレットの中にある貸し本棚です。エコロジーや文化関係の本が多く、私も本を借りたり寄贈したりしています。オーナーの明日香さん、いつもありがとうございます!