まあるい生活

コンポストと暮らす

”5つのR” ・・ゼロ・ウェイスト・ホームへの最初の一歩

2021年の読書記録に2022年追記を加え再掲します。

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西荻のご近所カフェ、カフェ・カワセミピプレットさんには、オーナー明日香さんセレクト、推薦図書の貸し出しコーナーがあります。

8月はしばらくお休みされるということで、気になっていた本をお借りしました。

 

普段、読むスピードが遅くて返却期限までに読み終わるか心配だったのですが、ひきこもりの3連休に無事2冊読了。

備忘録として感想をまとめておきます。

 

まずはこちら。 

”5つのR” ・・ゼロ・ウェイスト・ホームへの最初の一歩

ゼロ・ウェイスト・ホーム、ごみを出さない暮らし、というライフスタイルが一躍脚光を浴びるきっかけとなった本と言っていいでしょう。

私がこの本を知ったのは2020年のことですが、日本語訳の初版は2016年。

著者、ベア・ジョンソンのプロフィールには2008年からゼロ・ウェイスト・ホームに取り組み始め、次第にブロガーとして注目を集めるようになり、2013年に本書を出版しベストセラーとなった、とあります。

 

この本には、SDGsという言葉が出てきません。

国連でSDGsが採択されたのは2015年。

彼女がこの活動を始めたのはその前なので、当然といえば当然なのですが、

彼女の行動が、自分自身の価値観と好奇心から生まれているところがとても好きです。読んでいて気持ちいい。

ピプレットさんの貸本コーナーでこの本を手に取ったとき、文字数の多さに圧倒されて、正直、読み切れないかも・・と思いました。でも、有名な本だし一応借りておこうかな、ぐらいの気持ちだったのですが。

ページの大半を彼女が試行錯誤して得た実践例の紹介となっているので、とても具体的で面白く、するっと読めてしまいました。

翻訳者の方がごみ問題に詳しい方なので、日本で実践するコツなどを注釈として挟み込んでくれているのも助かります。

消費型の贅沢な暮らしを追求していたときの彼女と、価値観のターニングポイントを迎えて、ごみゼロのシンプルな暮らし方を追求する彼女、どちらに向かっているときも同じく理想の実現に向けて素直に立ち向かうタイプなのも好感が持てます。

贅沢を経てきたこそ身につけられた審美眼をエコに活かし、シンプルだけど豊か、そしてそれが決してイヤミじゃなく、ナチュラルなところが彼女の持ち味でしょう。

 

先ほど、実践例がたくさん紹介されていると言いましたが、彼女の行動の指針となっているものは5つのRです。

 

1) Refuse --- 不必要なものは断る ---(ごみの発生を防ぐ)

2) Reduce --- 必要なものを減らす ---(ごみの発生を防ぐ)

3) Reuse --- 買ったものは繰り返し使う ---(配慮のある消費)

4) Recycle --- 捨てないでリサイクルする ---(ごみの適切な処理)

5) Rot --- 堆肥化 ---(ごみの適切な処理)

 

嬉しいことに”堆肥化”が組み込まれています。彼女は出来上がった堆肥の使い道については詳しく書いていませんが、近年、欧米では各家庭でコンポストを作らなくても行政が生ごみを回収して堆肥化する仕組みを実現しはじめているようです。

 

※2022.10.9追記 本書の中の堆肥化 ”Rot” とは「朽ちていく」「腐らせる」の意味であり、日本語の堆肥、発酵 "Fermentation" させてつくるもの、とは異なります。書籍の中で庭先のコンポストに投入しているものの中には堆肥づくりには向かないものも含まれていますので、混同しないように気を付けてください。

 

▼ 欧米がごみ減量に関心が高いのは、焼却施設が少ないことも大きな理由となっているようです。

ideasforgood.jp

料理研究家の方が見た海外のコンポスト事情。人気レストランが考える幸せで豊かな食生活。

www.kateigaho.com

▼食品ロス問題ジャーナリストの井出留美さんによる日本での試み紹介。

news.yahoo.co.jp

 

自炊をするすべての家庭で生ごみは発生しますが、当然ながら、すべての家庭で堆肥化するのは無理ですし、すべての家庭で堆肥を必要としているわけでもありません。

生ごみを減らす、という意味だけでなく、生ごみが持っている栄養分を土に戻す、というエネルギー循環の視点からも注目されている生ごみ堆肥。まずは生ごみを”処理しなくてはならないもの”から、”資産に変わるもの”と捉えなおし、社会全体で活用していく仕組みづくりが必要でしょう。

 

2022.10.9追記 生ごみを堆肥化する前に、水分を抜いて(乾燥させて)焼却時の負荷を減らす、という方法が最も手軽で費用もかからず実効性のある選択肢であることを追記しておきます。具体的な方法については、後日まとめてみたいと思います。

 

自分がコンポスターなのでついつい堆肥化の部分に注目してしまいましたが、やはり一番に取り組むべきなのは、

 

1) Refuse --- 不必要なものは断る ---(ごみの発生を防ぐ)

 

です。

日本でもレジ袋の有料化が始まって約1年経ちました。買い物をするたびに繰り返される「レジ袋は有料ですがお付けしますか?」というフレーズは、もう不要なんじゃないでしょうか。訊く方も訊かれる方も飽きましたよね?

(2021年9月追記。最近、訊かれなくなってきたような気がします。)

www.meti.go.jp

2022.10.9追記 プラスチック資源循環促進法(プラ新法)が4月から施行されました。有料化にこそならなかったものの、コンビニなどで無言で手渡されていたプラスチックのスプーンなどが申請した人にのみ渡されるようになり、素材そのものもバイオプラなどに変更されています。必要な人には渡してくれるので利用者側からのクレームや混乱は特になかったと思います。

ideasforgood.jp

 

私は不在がちな実家のポストに「チラシ不要」と手書きした紙を貼っています。費用ゼロで効果バツグンです。防犯対策になるし、広告主にとってもメリットでしかないはず。

 

なかなか減らせないのは商品パッケージですね。。コンポストを始めて生ごみが減ってくると、残りのごみはほとんど紙とプラスチック容器だということがわかります。そして紙はそれほど嵩張らないし資源ごみに回せるし、結局、ごみ箱をいっぱいにしているのはプラごみだということが目に見えてハッキリします。

 

スーパーの食材はほぼビニール袋に入っていますし、お肉やお刺身、お惣菜は必ずプラケースに入っています。こないだは、デザートが買いたくて冷蔵ケースに寄ったものの、すべての商品がプラスチックに包まれているのを見て諦め、またスーパーを一周してから近寄って、やっぱり諦めるというのを繰り返してしまいました。

 

これは量り売りのお店を利用したり、My容器を持ってケーキ屋さんで購入すれば済む話なのですが、仕事帰りに寄ろうと思ったら駅前の24時間スーパーしか開いていない、というのが現実です。

 

とはいえ、夏の課題図書その2である『プラスチック・フリー生活』にプラスチックの害が詳しく書かれていましたので、脱プラは今後の課題です。。詳しくは次の投稿にまとめようと思います。

 

2) Reduce --- 必要なものを減らす ---(ごみの発生を防ぐ)

 

これも、ごみを生み出さないフェーズです。大まかに言って、過去を振りかえり不要なものを買っていなかっただろうかという問いかけと、今後、何かを買おうとするときに本当に必要かよく検討する、という2つの側面があります。

 

自分の暮らしに何が必要で、何か必要でないか。いつか使うかも、という可能性は常にあります。無くても大丈夫、という観点から考えないとモノは減りません。

十分な利用機会がないものは捨てないで誰かに譲りましょう、というのも "Reduce" に入ります。次の "Reuse" とごっちゃになりそうですが、著者のベア・ジョンソンは、モノを減らすことで保管や掃除の手間、スペースの有効活用ができるメリットを含めて"Reduce"と考えているようです。つまりシンプルライフですね。

日本でもフリーマーケットは大人気でしたし、コロナ禍でもヤフオクやメルカリなどのフリマ・アプリを利用することで在宅での取引が可能になり、ちょっとの手間さえかければ不要なモノを手放すのは簡単になりました。ただ、その売り上げで無駄なモノを買わないように注意しなくてはなりません。

 

▼南フランスの物々交換マーケット(インスタグラム動画)

粗大ごみ捨て場とリサイクルマーケットを融合させたような施設です。ごみ捨て場ではあるのですが、古本、家具、剪定した庭木などの種類別の置き場を作ってやることで、必要な人が必要な物を探し持って帰ることが容易になります。

恐らく一定期間経ったモノは処分されるのでしょうが、持ち帰りが多ければ多いほど、ごみが減っている、というシステムのようです。

https://www.instagram.com/tv/CSIUKXrLgJ1/?utm_medium=copy_link

 

この規模感、さすがですね。行政の手が入ることでスケールアップします。そして動画に登場するニコルさんのマスクがおしゃれ。センスの良さって、推進力になるのだと思わせる映像です。

 

3) Reuse --- 買ったものは繰り返し使う ---(配慮のある消費)

 

この項は、無駄な消費を減らす、資源の枯渇を和らげる、モノの寿命を延ばす、がテーマです。

個人的にはこの本で紹介されているシェアシステムは "Reduce" に近いような気もします。ガレージに眠らせておくよりレンタルしたりシェアした方が使用回数が増えるという意味で "Reuse" なのでしょう。

ビール瓶を酒屋さんに返す、というのは昔から行われているリユースの方法ですが、もっと見直されてもいいと思います。若い人だと、使い捨てない=エコバックや水筒、タンブラーの利用などを思い浮かべる人が多いと思いますが、リユースのための新商品を次々買う、など本末転倒にならないように気を付けたいところ。個人で持たないでリユース容器をシェアするシステム作りもスタートしているようです。ぜひ普及してほしいですね。

また、お洒落な古着屋さんやリサイクルショップも増えてきました。昔盛んだった修理の文化がどこまで蘇るかは、消費者次第かと思います。時計屋さんもオーディオ屋さんも高級品しか扱ってくれないんですよね。安物の修理じゃ商売にならないのでしょう。簡単な修理なら自分でできるような技術のシェアが望まれるところです。

 

2022.10.9追記 2022.9月に杉並脱プラ研究所主催の自転車メンテナンスのイベントに参加してきました。学生時代から愛用する手巻き式時計やダイバーズウォッチの修理をしてくれた西荻窪の時計屋さんも後日紹介したいと思います。

 

4) Recycle --- 捨てないでリサイクルする ---(ごみの適切な処理)

 

この段階で必要なのは、どんな素材がリサイクル可能か、という知識です。手元にあるものの素材を認識し、どういう形でリサイクルすればいいのか、新しいものを買う時は何を選べばリサイクルが可能か、という視点で考えることが必要です。リサイクル可能な素材のものを選んで買えば、不要になったときも、ごみにはなりません。

ただ、現実的に何がベストな選択であるか、判断が難しいときもあります。プラスチックのリサイクル問題については近年、話題になっていてオンラインの勉強会も増えてきました。リサイクルしていると言いつつ実態は焼却(熱回収)だったり、マテリアルリサイクルしても品質の劣化は避けられません。そもそも日本はリサイクルが全然進まずに海外に輸出していたそうですが、受け入れ先の国々の環境汚染、健康被害から目を背けていることも問題です。

2022.10.9追記 プラスチックごみのリサイクル状況について公開されている政府資料

https://www.env.go.jp/press/files/jp/114031.pdf

と、一般社団法人プラスチック循環利用協会の資料リンクを張っておきます。

https://www.pwmi.or.jp/pdf/panf1.pdf

 

▼『ゼロ・ウェイスト・ホーム』の翻訳者の服部雄一郎さんのブログ。

sustainably.jp

 

▼しかしそんな日本で、確実に成果をあげているのがコチラ。ゼロ・ウェイスト問題に興味のある人には有名な場所です。

zwtk.jp

▼ガラスは品質を保ったままリサイクルできる素材だそう。でも、そのためのちょっとした気遣いが必要です。

www.glass-3r.jp

 

住人不在の実家を片付けているとき、戸棚から出てきたのは私が小学生の頃に使っていたガラスのピッチャーでした。いったい何年モノ?! 主に夏の麦茶用に使っていたので茶渋とホコリでくすんでいましたが、漂白剤で洗うとガラスは元通りの透明感を取り戻しました。その後、西荻の家で普通に使っています。この経験で、ガラスという素材の丈夫さを思い知らされました。

 

実は先日、琺瑯の容器を買い、届いたらあまりにも可愛いかったので買い足そうかと思ったんですよね。。琺瑯は長く使えると言われていますが、実際は繊細な素材で傷もつきやすいです。でも独特の可愛らしさがあり魅力的です。ヒビの入ったプラスチックのお弁当箱の替えを琺瑯にしようかな~とネットショップ散歩をしていたときにハッと思い出したのが、この ”リサイクル可能な素材かどうか” です。

▼回答がコチラにありました。鉄くずとしてリサイクル可能なようです。

2022.10.9追記 Not Foundになってしまいました。改めて検索してみましたが、古道具屋へ持ち込む以外のリサイクル方法が見当たりません。

www.horo.or.jp

 

面白いことに、LFCコンポストさんのアンバサダー講座で、大都市よりも中規模、そして小さい市町村の方が、一戸当たりのごみの量が少ない、と知りました。都会の方が無駄にモノを買いすぎる、ということの現れだと思います。だって都会では美味しそうなものや可愛いいものが、いとも簡単に手に入るのですもの。お腹のすいた会社帰りにお惣菜の割引シールを無視するのは自制心が必要です。

 

そうです、現状、ごみの減量については一部の関心のある人の気持ちや選択にかかっています。それは大事なことですが、企業や行政が動いてくれないと解決しない問題もあります。

 

▼悲観的なタイトルに見えますが、ごみゼロを突き詰めたからこそ浮かび上がってきた社会問題を紹介しています。

wired.jp

 著者のベア・ジョンソンは、試行錯誤した経験から、自分と家族、そして友人との関係においても「心地よいバランス」を見つけていく必要があると言っています。

 

忙しいとき、体調が悪いとき、出来合いのお惣菜や包装されたオヤツはありがたいものです。もしそれが、返却可能なリユース容器に入っていれば、ごみは出ません。自炊するにも調味料や食材はたいがいプラスチック容器に入っていますが、それは衛生的に保存できて、いつでも買える、という利便性とトレードになっています。今のように飲食店が20:00で閉店してしまうような状況(2021年9月時点)では、プラスチックに包まれている食材を許容しなくては何も食べられなくなってしまいます。

 

ただ、ひとくちにプラスチックと言ってしまいがちですが、実は何種類もあります。

透明だったり、不透明だったり、固かったり、柔らかかったり。。さまざまな目に見えるバリエーションを持つプラスチック製品に囲まれて暮らしているくせに、これを読むまで、私はほとんどその違いを認識してきませんでした。

自分にとっての「心地よいバランス」というのは、周囲と自分との関係性のことでもあり、理想の生活への向かい方のことでもあります。どんなペースで自分の生活を変化させていくのが良いのかは、人それぞれです。ベア・ジョンソンに憧れは抱きつつ、自分のペースで一歩一歩進むためには自分の生活サイクルにあわせた時間が必要。ただそんな中でもこの『プラスチック・フリー生活』を読めば、避けるべきものの優先順位がつけやすくなるかなぁと感じました。詳しくは次のブログにまとめたいと思います。


最後にまとめます。

1) Refuse --- 不必要なものは断る ---(ごみの発生を防ぐ)

2) Reduce --- 必要なものを減らす ---(ごみの発生を防ぐ)

3) Reuse --- 買ったものは繰り返し使う ---(配慮のある消費)

4) Recycle --- 捨てないでリサイクルする ---(ごみの適切な処理)

5) Rot --- 堆肥化 ---(ごみの適切な処理)

ポイントは生活をシンプルにし、ごみになりそうなものは最初から買わない、家に持ち込まない、すでにあるものは再利用の方法を考えるか、使ってくれそうな人に譲る。そうでなければ、堆肥化(Rot)するか、適切な方法で処分する。つまり、循環しないものは購入しない、ということなります。無駄な水が流れないように蛇口を締める。そんなイメージでしょうか。

 

2022.10.9追記 本稿を書いてから1年経ちました。追記したいことが多すぎですので、別途ブログにしたいと思います。どれだけ実践できているか、ということも検証してみなくては。